産む前に夫婦で話し合っておこう…出生前診断について
妊娠をすると、「出生前診断」を考える人もいるかと思います
障がいや病気をもった子どもが産まれたらどうしよう
と不安になる気持ちはどのご家庭にも少なからずあると思います
ここでは、出生前診断とは実際どんな検査をするのか、費用は?何がわかるの?といったことから私たち夫婦の場合はどう判断したかということも含めて解説します
出生前診断について紹介する前に…
出生前診断をするかしないかを判断するにあたってまず間違った情報が巷にあふれていることが判断に迷う原因になっていると思います
なんとなく高齢出産は、リスクが高そう
一人目にダウン症の子が産まれると二人目もダウン症が産まれる確率が高いんじゃないか…
などと単なるイメージだけで決めてしまうと元気に産まれるはずだった命をみすみす奪うことになりかねません
まずは、正しい知識を身につけて、出生前診断を選択するか判断する材料になれば幸いです
出生前診断(しゅっせいぜんしんだん)とは
広い意味で「出生前診断」といえば、
赤ちゃんが産まれる前(出生前)に行われるすべての検査が「出生前診断」
ということになるわけですが、ここで説明する出生前診断というのは
妊娠中の赤ちゃんに何らか病気を見つける検査
特にその中でも
胎児の染色体の病気を見つけ出す検査
について「出生前診断」として紹介します
出生前診断をする時期はいつから?検査の流れは?
胎児の染色体疾患の可能性を評価する非確定検査として
- 「胎児超音波検査」(検査時期 11~13週)
- 「母体血清マーカー検査」(検査時期 15~17週)
- 「母体血胎児染色体検査(NIPT)」(検査時期 10週~14週)
があり、これらの検査で可能性が高いと指摘されたら、
- 「羊水検査」(検査時期 16週以降)
- 「絨毛検査」(検査時期 10~13週)
※ 検査時期は、妊娠からの周期ですが、病院ごとに異なるため確認を取った方が確実です
出生前診断の検査の種類や方法、費用
超音波検査
通常の妊婦検診でも行われる超音波やX線・MRIを使用して画像で赤ちゃんの様子を検査する方法です。一般的に知られているのが超音波を使った検査です。
妊娠の早い時期から手足や臓器に異常が無いか?を診断します。
医師が異常の可能性があると判断した場合は、さらに詳しい検査で調べることになります。
胎児スクリーニング検査(2~5万円程度)
通常の妊婦健診で行う超音波検査とはまた別に行う検査です。一般的に、妊娠初期と妊娠中期に1回ずつ受けることができます。
主に妊娠初期は胎児の染色体異常、妊娠中期は胎児の体や臓器の形の異常がないかをチェックします。
母体血清マーカーテスト(1~2万円程度)
母親の血液から胎児の体で生成されるホルモンの濃度を調べ、胎児の染色体異常がないかを検査します。
検査で調べる血液中の成分の種類が3つのものを「トリプルテスト」、4つのものを「クワトロテスト」といいます。
結果が陽性だった場合、確定診断のために羊水検査を受けることもあります。
NIPT(20万円前後)
「新型出生前診断」とも呼ばれるNIPT(母体血胎児染色体検査)は、母体の血液を採って、胎児に染色体異常がないかどうか調べる検査です。
2013年から日本に導入された比較的新しい検査方法です
検査精度が非常に高く(約99%)、母体へのリスクもほとんどない検査といわれてはいるのですが、NIPTを受けるためには、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります
・ 前のお子様に染色体の数の変化があった妊婦さん
・NIPT以外の非確定的検査(母体血清マーカー検査など)で染色体疾患の可能性が示唆された妊婦さん
・超音波検査で染色体疾患を疑う所見がある妊婦さん
・高年齢の妊婦さん(一般的には出産予定日に35歳以上の妊婦さん)
・13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーについて、ご心配の強い妊婦さん
このNIPTを受けて結果が陽性だった場合、確定診断のために羊水検査を受けることになります。
絨毛検査(10~20万円程度)
絨毛検査は、妊婦さんのお腹に針を刺すか、子宮頸部にカテーテルを挿入して胎盤から絨毛を採取し、胎児に染色体異常や遺伝子異常がないかどうかを調べる検査です。
比較的早い時期に行うことができ、染色体や遺伝子の異常がほぼ100%の確率でわかるというメリットはありますが、母体と胎児にわずかに負担がかかる検査なので、実施条件がいくつかあります。
羊水検査(10~20万円程度)
母体のお腹に針を刺し、採取した羊水の成分から胎児の染色体異常や遺伝子異常がないかチェックする検査です。
絨毛検査と同じく、精度はほぼ100%ですが、母体と胎児にわずかながらリスクがあるため、受けるかどうかは慎重に検討する必要があります。
出生前診断にはリスクもあるの?
精度の高い絨毛検査や羊水検査ですが、流産の危険性があります
出生前診断でわかる病気はごく一部
胎児のときにわかる病気は主として染色体異常(よく知られているのがダウン症候群)など一部の病気であり、心臓の病気や代謝や免疫といった機能的な病気など産まれてからでないとわからない病気も多くあります
何らかの先天的な病気を抱えて産まれる赤ちゃんは3~4パーセントと言われており、出生前診断で正常だと診断されても何らかの病気を持って生まれてくることはあるということです
女性の年齢とダウン症候群の子どもが生まれる確率の関係について
一般的に高齢出産はリスクが高いといわれがちですが、実際にどういったリスクがあるのかどれくらいリスクがあるのか、
下記の表は一例ですが、母親の年齢とその年齢で産まれた子どもがダウン症候群や何らかの染色体異常を持っている確率を表したものになります
一般的には、出産時の年齢が35歳以上の場合、高齢出産といわれるのですがこの表をみると
35歳の母親がダウン症候群の子を産む確率は385分の1(約0.26%)
何らかの染色体異常を持つ子を産む確率は192分の1(約0.52%)
となります
これを高いとみるか低いとみるかは判断が分かれると思います
ウチは…
選ばないという選択
我が家も子を妊娠してから出生前診断を受けるかどうかを夫婦で話し合う場を設けました
結論は、「出生前診断を受けない」ということでした
最初から出生前診断を受けないと決めていた、なんてことはなく、何らかの疾患を持って生まれる子がどれだけいるのか、出生前診断を受けるメリットやリスク、受けた後にどんな選択肢があるのか、私たちなりに様々な方法で調べ、勉強しました
そんな経緯をたどってたどり着いた結論は、「選ばないということを選択する」ということでした
結局出生前診断を受けて、もし陽性が出たら今後どうしていくか迷うことになるでしょう
様々な選択肢がちらついたと思います
それならいっそ、たとえどんな病気を持った子が産まれたとしても我が子として迎え、育てる
出生前診断を受けることによって広がる選択肢をそもそも「選ばない」ということを決めたのです
もちろん様々な意見があると思います
もし疾患を持った子が産まれるなら育て方を考えるために出生前診断を受ける
という選択肢もあると思いますし、全く違う動機で出生前診断を受ける人、受けるかどうか迷っている人もたくさんいると思います
それぞれの家庭にそれぞれの事情があるので、正しい答えなんてきっとでない問題なのだと思います
それでも「自分たち」で決めなくてはならない
出生前診断を受けるには一定の条件があるものもありますが、NIPTや羊水検査といった出生前診断を受けるかどうかは基本的に「自分たち」で決めなくてはなりません
「自分たち」というのは、胎児のお母さん、お父さんです
書籍やインターネットで情報を得ることができますし、検査を受ける前に医師のカウンセリングを受けることもできます
そして出生前診断を受けた後には「産む」か「産まないか」を決断しなくてはならないのです
命の選別をするなとか倫理的な問題はあるのはわかった上ですが、お腹の子どもとその両親にとって良い決断をすることができたらいいと思います
まとめ
この記事で、不愉快な思いをした人がいるのなら申し訳ございません
出生前診断は、命の選別につながりかねない検査であり、難しい問題を抱えています
しかし、診断を受けるかどうかを考えるより先に、まずは正しい情報を仕入れることが大切かと思います
その一つのきっかけにこの記事がなってくれたらと思い、私の考えも含め、紹介させてもらいました
下記に出生前診断を扱った書籍を紹介します
産婦人科医や出生前診断を取材したジャーナリストの目線からの出生前診断をわかりやすく解説していただいているので全く知識がない方が読んでも読みやすい本かと思います。
出生前診断の最先端研究者である著者が、「新型出生前診断」といわれるNIPTを中心に出生前診断とは何なのか、正しいっ情報を解説し、「命の選択」について考える一冊となります
「出生前診断とは何かわからないけど気になってる」
「受けたほうがいいのか悩む」
という夫婦向けに書かれた内容のため、専門用語もわかりやすく解説されて、読みやすいです
出生前診断とは何か、を知りたい人にはおススメです
医者の誤診によって生まれた子どもは、ダウン症候群だった
産まなければこの子はこんなに苦しむことはなかった
それでも中絶せずに産んでよかったのか
簡単には割り切れない両親やその家族の苦悩や出生前診断を行う助産師の苦しみを書いたノンフィクション
大宅壮一ノンフィクション賞 受賞作品
医者の誤診はともかくとして自分が予期していない妊娠出産をしたときに、どう行動するかどう選択し、決断するのかを考えさせられる一冊となります 人工中絶に関する現在の法律の本音と建前や現実との矛盾についても解説しているので、法律関係に興味がある人もぜひ読んでみてください